地域で包含する高齢者福祉のまちづくり

 近年頓に、物質的な価値観よりも、精神的な豊かさを求めたいという論調が聞かれるようになりましたが、私達が住む町は、この観点からは、はなはだ貧弱なものであると思います。

 日本が急速に発展したおおよそこの100年の間に、都市の近代化は、古き良き時代の安らぎの空間、憩いの空間を次々に破壊してまいりました。列強諸国に追いつき追い越せの考え方が人々の生活の場である町にも及び、近代的な西洋風ビルディングの建設は、古の昔からの、村人が協力し合うコミュニティを崩し去り、物流路として、憩いの場としてあった水路は道路として蓋をされ、人々の集いの場であった橋の上には、高速道路がかかり、日当たりの悪い空間に囲まれて、人々はあくせく効率優先の目標管理のビジネス社会の中で働きつづけています。

 物質的には、使い捨てであり、あまるほどになっておりますが、民主主義、自由主義の精神的影響の下に、狭い土地に、目一杯の建物を建ててお互いに自己主張し、それは景観的にも、機能的にも見るに耐えぬものとなっている地域が多くあります。

 そのまちの片隅で、人里はなれた郊外で、特別養護老人ホームのような、効率主義の人間の尊厳を無視せざるを得ないようなシステムが、稼動し多くの高齢者の人生の総決算を、自立性のない、ただ生かされているような環境に追い込んでいるのが現状です。

 まちづくりの目的は、一言で言えば、住民にとって豊かなまちを作ることですが、かけがえのない経験を持つ高齢者など、社会的に弱い立場にいる人々の扱い方によって社会の豊かさかが計られるように思います。 その意味では、現在多くの地域におけるまちづくりは、その目的を果たしているとはいえません。

 本稿は、少子高齢化社会の進展の中で、家族だけではなく地域コミュニティ全体で、高齢者自身の尊厳ある自立を見守り、やさしく包み込むことのできるまちづくりができないかその可能性について検討することをその目的としています。

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