反省点と再開発商業のあるべき姿

司会: 店舗の配置については、いろいろ問題もあったようですが、うまく出来上がったと思います。次に、再開発商業のコンサルの反省点やあるべき姿ということについて、最初内装管理を担当された立場から、コンサルに対して注文がありますか。

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桧垣: 私は、平成7年のお正月から担当し、専門店街は、まだ鉄骨がたちあがっていない地下だけの状態のときでした。内装監理室の立ち上げの作業として通常は、テナント内装設計のための白図を作成するのですが、図面がなかった。古いやつだとか、新しいのは今直しているとか、いつまでたってもこれだという図面がなく、白図を作るのにものすごく苦労しました。内装設計指針を作るにあたって、工事区分がこれまでのショッピングセンターとはかなり異なった工事区分でした。少し非現実的な部分もありました。私は、権利者というものの概念が無かったため、権利者関係では大変苦労しました。その他、スケジュールで、内装設計説明会にしても、内装工事の指定業者制にしても後手に回って、理想の形にはなりませんでした。フロアゾーニングなども変わっていて、管理シャッターを変なところに付けなくてはいけないとか、火を使うところとそうでないところとの区分に対する基本的な考え方が整理されてなく、まずい点がありました。諸官庁との調整で結構苦労しました。

司会: 権利者の方の意思決定とか、配置を含めたその辺がずれ込んでたということもあったのですか。

花見: 府中は、府中の条件があったため、結果として調整に苦労したわけです。これが新しいショッピングセンターを造るときは、前もって決めていく話だからそこは問題ないのですが、再開発では、簡単に決めるわけにいかないところが結果的に苦労の種になるということです。再開発のコンサルを手がけていることは、貴重な体験をしているわけであり、多くのノウハウを蓄積することになり、将来的にいろいろな商業に対応できるということだと思います。

司会: ショッピングセンター・専門店街のスケジュールのマスタープランというのは、そもそもあったのですか。

桧垣: ありました。それが少し非現実的なマスタープランだったわけです。だから、最初からそのマスタープランがしっかりしたものであれば、テナントリーシングが権利者の関係で遅れても、ちょっと調整すればかなりうまくカバーできたと思います。外部テナントの設計説明会は、結局やらなかったわけです。

内田: 外部テナント募集の案内書は、しっかりしたものができていましたね。

上林: それも総合スケジュールからいくと、かなり遅れていたのです。本来は、 7、8ヵ月前にはやっておきたかったものです。

司会: 遅れた理由は、何ですか。

上林: 再開発ビルというのは、まず権利者さんをFIXしないと残りの部分の外部テナントを募集できないのです。特に最後になってスーパーが入ることになり、計画が大どんでん返しになったし、さらに地下からまた1階にあげるという一店舗の話が何十店舗の話になってくる。そうすると図面もできないし、場合によっては、設備の必要な店は、出店できなくなる。やはり権利者店舗の人が納得した上でないと次のステップにいけないというのが現実なのです。ですから権利者店舗については遅れたから切りますと言えないわけです。この点がコンサルとして一番もどかしく辛いところです。

司会: 府中プロジェクトが終わり、それぞれのセクションでいろいろな課題がでてきていると思うんですけれども、それが分かっただけでもこれからの再開発の商業のあるべき姿ということで役立てられると思います。再開発の商業をやっていくためにまず一番大事なものとして何が必要なんでしょうか。今言った権利者が第一ということになってくるのでしょうか。

桧垣: 私は、コンセプトというか最初の軸になる考え方、これをくずしては何も出来なくなると思います。それが大事だと思うのです。ただ、それだけではなかなか権利者の価値観を変えていくかことができないことが問題です。

花見: 現実商業の現状というのは、商売されている方もわかっているわけです。コンサルから理詰めで来られればやはりNOとは言えないわけです。だけど、一方では、自分の価値観の合わないものについては反発もするでしょう。そこで納得行くまで何回も話し合ってもっていくしかないのです。そうすれば自分の店の位置づけも理解し、合意につながると思います。商業は、ずるいという言い方もある一方、ある意味で現実をよく分かっているから、それを上手にわからせることが必要でしょう。

司会: 府中商業の全体の感じとしては、どうでしょうか。

福田邦男(商業計画担当): そもそも府中というところはそれなりの商業活力のあったところで、組合施行という前提もあったし、そうするとやはり自分たちで何とかしなきゃいけない。商業者としては利害得失というのは、今までは自分の商売だったけれども、これからは集団としての商売だという中で、その中での利害得失の理解が無いとだめだということです。この過程をうまく担当した上林さんたちの努力が結びついたということだと思うのです。私は、府中の再開発は、商業としては100点満点ではないかもしれないけれども、再開発という部分でみたら充分高い点数を上げられる再開発だなと思います。

花見: あとは業績を伸ばしていってもらいたいと思うだけですね。特に商業の場合は、結果が数字で出てきますからね。

上林: 売上げが伴ってなければその再開発は、だめな再開発となるし、伴っていればいい再開発になる。その点がコンサルとしては恐いし、やりがいもあります。だからこそ、途中で権利者がわがまま言っても、いやそうじゃないんだよって言う部分を持ってないといけないわけです。

内田: 経験を持っている商業コンサルとして、こうなればいいんですよということを適確に示してやる。それを繰り返しやって、出店部会等の組織を動かし、コンサルの手法をうまく出していくということだと思います。

上林: 重要なのは、人でしょう。向こうも人だし、こっちも人ですから。

内田: そうですね、人と人ですね。

上林: どんな優秀なコンサルでも、その人の中にリーダーになる人がいないと出来ないと思います。
それからもう一つ重要なのは組織です。組織の中に「はねっかえり」がいても全体としては、「そうじゃないんだよ」というような組織にしておきたい。そのためには繰り返し勉強会、研修会や集会の開催が必要です。それから再開発って十把一絡げにできない、またマニュアルができないのがこの辺にあると思うのです。再開発の地区、その地区の人によってみんな違います。府中のやり方が他で通用するかというと絶対通用するわけでない。そこの地区の顔が全然違うんですね。気質だって違うしね。

司会: 最後に、フードコートの展開はいかがでしたか。

山岸 (商業推進担当): 建物は、下から作って行きますので、3階にあった飲食を1階に下ろしたということで、相当スケジュール的に無理がありました。フードコートの反省としては、設備を伴う形態の売り場をFIXの段階からフロアを動かすという時点で非常に無理がありました。よかった点としては、一緒にやってたデザイナーもがんばってくれたため、普通のイートイン・コーナーみたいなものとはかなり違う、一線を画したグレードの高いものが出来たと思います。かなり手のかかるフードコートを作ったのでオペレーションに関しては今でもかなり苦労してます。開店後2年間にわたってデベロッパーのお手伝いをしながら、フードコートの店長会を月一回やって、その合間に店長の飲み会なんかやって、横のコミュニケーションを取りながら運営しているのが現状です。それで人と人との絆を作ってそれで助けてもらったり、助け合うという形で運営をしています。ナショナルチェーンの核となっているミスタードーナツとかケンタッキーフライドチキンは、予想以上の売上げとなり、集客効果も非常に高い。それから他のナショナルチェーン2店は、若干苦労されているのですが、権利者の中でも一番苦労したおそばやさんは路面にあったお店より大分売り上げを伸ばしています。1.3倍、1.4倍とかになっていますから、そういう意味ではいわゆるナショナルチェーンで固めた形態と比べると、地元の一店舗しかないおそばやさんを入れて、再開発特有の、いわゆる「地権者はきらわれる」というようなマイナスのポイントをプラスに変えられたのかなと思います。自分としては、再開発にあたっては、キーテナントもナショナルチェーンも嫌がる「権利者店舗」というのは、マイナスポイントなのですけれども、マイナスポイントをいかにプラスに変えていけるかが、これからの課題だと思います。

司会: 再開発ゆえに出来た事例ですね。また、質の高い空間となりましたね。

上林: お客さんもあきずに来ていただいているかなと思いますが、かなりうまくミックスできたということでしょう。そうでなければ、それこそマクドナルドがあり、何々がありというNCで固めたものでは、それで終わりになってしまいました。府中らしいという部分が、私はその辺に表現されていると思うのです。トータル的に言えば、うまくいった事例だと思います。その後、出来た溝口再開発でも同じようなフードコートができましたが、彼らは何遍となく府中を視察に来て、作ったということです。もちろん悪い部分もあるから反面教師として彼らはそれをよりよくしているでしょうし、そういう部分で参考にしていただいたということ自体、よかったと思います。

山岸: これからの街づくりの中でフードコートは主流というか、飲食の中では昼のアイドルタイムから夕方にかけてまんべんなくお客さんに対応できると言うことで、レストランよりは多機能なことが見直されていると思います。それも再開発ならではの権利者を入れて作ったということに府中再開発のフードコートの意義があると思います。

司会: 長時間、お話していただき有り難うございました。

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