地域コミュニティを創生するまちづくりルール
現在日本には地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地が全国で25,000ha、東京都だけでも6,000haあると言われている。1995年に起きた阪神淡路大震災では特に木造密集地区を中心とした被害は甚大なものであった。国もその経験を鑑み、密集市街地の整備に向けた法整備、予算付けをしながら防災対策を強化してきている。
密集市街地と呼ばれる地区は、建物だけが密集しているのではない。当然その戸数以上の市民が生活していることは言うまでもなく、そこには多種多様なライフスタイルが混在する地域コミュニティが形成されているのである。しかし、そこは4mに満たない細街路、細分化された狭小敷地、そこに肩を並べて建つ古い木造住宅群という実態があり、安全なまちづくりを担う行政にとって、密集市街地整備は防災対策と言ったハード面での整備目的がこれまで重視されてきた。
一方、そこに居住する地区市民にとっては、行政が懸念するような密集地区に対する防災上の危機感を抱く人より、慣れ親しんだ隣人への安心感や、歩いてすぐ行ける商店街といったコンパクトに集約された生活機能への利便性を感じる人の方が多いのではないだろうか。特に高齢者居住者にとって、これまで築かれた安心できるコミュニティから新しく整備された空間へ身を置くことは、必ずしも望まれるとは限らないのである。市民も防災意識が当然無いわけではない。しかし、それだけが理由で所有する土地を道路として更に削り、また借金をしてまで自らの家を建替える決心に至るであろうか。
こうした現実的な課題が輻輳する中、都市再生課題の一つである密集市街地の再編を具体的に推進していくためには、これまでのような結果としてできあがる防災のまちづくりの前に、市民一人一人がもつ複雑課題を紐解き個々のニーズを捉えながら、地域という市民が共有する空間や人とのつながり、つまり「地域コミュニティ」を再生する方策を考えることが重要ではないだろうか。
