マンション建替えとライフサイクルコスト

マンション建替えの問題点

【合意形成に関する課題】
 一戸建て住宅の立て替えはどのように行われるでしょうか。老朽化によって傷みがひどくなるというような物理的劣化、あるいは子どもが成長して部屋数・広さが足りなくなるというような機能的劣化、または相続、売買などの理由によって建替えが行われます。建替えの判断は所有者個人が行うだけで良く、建築計画は別として、立て替えの実施に関しては隣人の了解を得る必要はありません。
 一方、分譲され区分所有された集合住宅(以下マンションといいます)では、建て替えには区分所有法の規定による5分の4以上の同意を得、区分所有法の規定を満たさない限り、建替えを実施するわけにはいきません。建て替えに向けて区分所有者(マンションの隣人)の合意形成を図る必要があります。
 実際にはこの合意形成がなかなか困難であるのは次のような課題がそこにあるからです。
まず区分所有者個々のライフステージの違い。20代の世帯から70代あるいはそれ以上の世帯が単一の構造物の中で生活していること。
 年齢的また経済的なハンディのある住民の方々の存在。
 建替えに対しての意欲や必要性に対する認識の差。
 可能となる費用負担限度も千差万別となること。
 そのため、特に費用負担が発生する状況下での建替えの是非は意見の対立が大きくなり、合意形成が難しい場面が多々発生します。


【建替え・修復の判断基準】
 震災などで使用不能と判断され緊急に建替えを決議しなければならない場合であっても合意形成が困難であることは、既に経験されています。建替えか修復かについて、所有者の年齢差、金銭債務の大きさ、費用負担の負荷の重荷度に、それぞれの差があります。建替え、修復どちらを選ぶべきかの意志に当然ぐらつきがあり、合意形成にに多くの時間と労力が必要となります。建替え要件となっている「使用、修復不能」という判断自体も簡単にはいかず、被災という特殊条件下ですら建替えか修復かの是非についての合意形成は困難なものでした。
建替えを行うべき状況を論理的、合理的に説明できる判断指針づくりが必要となります。今後大きく発生するマンション建替え問題に対し、これまでの震災経験も踏まえ判断指針や法制度の整備に向け、方策を検討し、策定すべき時期にあります。


【費用負担に関する課題】
 マンション建替えの成功例が多く見られるのは、指定容積率に対して利用容積率に余裕があり、この余剰容積率を活用して保留床を生み出す等価交換方式の建替え事業の場合です。もちろん立地条件や市場性に恵まれていることも成功条件となります。等価交換建替え事業の特徴は、地価が高い状況下で保留床を高い価格で売却することにより、区分所有者の自己負担を必要としないか、あるいは負担軽減が図れる点にあります。その点が最大のメリットとなって前述の費用負担の問題を解決し合意による建替えを可能としています。
 ところが、今後建替え期を迎える分譲マンションでは、余剰容積率を確保していないケースが多くなります。また地価の下落傾向が続く限り、従来のような等価交換方式は成立しにくく、従って費用負担の低減ができず、建替えに対しての合意形成がますます困難になります。

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