まちつくり事業における契約デザイン
長期展開のまちつくり事業と契約上の諸問題
~まちつくりの集団的特性と契約デザインの背景を巡って~
まちつくり事業といっても、今のところ再開発事業の実例しかありませんが、数年から10有余年に亘るまちつくり事業では、初めから事業の終了までに締結される契約数はおよそ350件から600件にも亘っています。この中では標準約款になっている契約や集団化事業であるため繰り返し作業が数多く発生する契約や、或いは成功報酬的でなければ処理が困難な契約が含まれています。
この数多くの集団事業特有の契約が10年間もの長期にわたって展開するわけですから、補助制度上の問題もあって契約はどうしても短期的視野に伴うものとなり、その多くは契約相互の脈絡が失われやすいのが実態です。その間の契約発注に際しては指導官庁の協力のもとで、各専門分野別に担当コンサルタントの協力の中で実施されていますが、その相互関係は不明確で一定の方向を持っていないケースがよく見られます。
一方、各領域の専門コンサルタントは、事業化コーディネーターの下に1つのチームとして事業の推進に協力しているわけですが、コンサルタントチームが強固に結束して実施しているケースもあれば、形だけの集合状態のチームになっていることもあります。
そのような場合、何らかの理由で事業が停滞したり、困難な局面に到達した時には、プロジェクトの運営は余計な混乱を引き起こし更なる停滞を続けるのは当然のことです。
多数の権利者の合意を求めつつ恰も与件への適応を果たすべく懸命の努力を払う中では、かれらの眼は事業の円滑な遂行上に留まって、契約行為は発注者から見ても受注者から見ても、その多くは大変面倒な仕事とか単なる事務処理と受け取られがちです。その契約内容に問題があったことが解るのは進行過程に深刻な影響が発生した後であって、計画的な配慮に欠けていたことと修正に大変な手間と努力を要することに気づきます。
公益的事業の実施上の態度として、そして貴重な市民の資産と権利者の財産をつぎ込んで公益的事業として、行われる事業としては許されない事態を招くようであってはなりません。むしろ様々な角度から研究され長く積み上げられてきた事業制度を、さらに有効に活用し、現実的に適応させるためには、常に制度をシステマティックに深化させなければなりません。諸外国における様々な契約計画(Contract Planning)テキストの冒頭には、契約計画の必要性や目的について、いずれも次のようなことが記されています。
「契約計画策定の目的は、契約関係にある者の双方が費やすエンジニアの技術・労働力・資材・時間・資金など資源から最大の利益をあげるべく、計画することである。発注者が受注者の行動を動機づけるため、この検討は発注者から始める。行動する前に計画が必要である。したがって発注者の計画ステージから見始めるべきである。
契約を成功させるには、発注者が設定した目的に沿った、明解で現実的な計画とすることが必要である。発注者が入札募集を行う前に、あるいは単一の契約者と交渉を始める前に、契約のためのコンセプトと計画が存在しなければならない。また多数の部分契約からなる包括契約の場合も、包括契約全体に対する契約計画が必要である。この計画ステージは見落とされることが多く、エンジニア・建築家の特権とみなされがちである。しかしこれは最も熟慮を必要とする重要な段階であり、発注者における収益力が、資金と時間を簡単に失ったり保全したりできるのがこの段階であるため、最も綿密に考慮すべき段階である。「作業を始める前に計画する」――これが契約計画における第1の法則である」
ここには記載されていない課題に「集団的合意を含めて計画する」という問題があります。この様なまちつくり事業には「権利変換」あるいは「換地」という主権者たる多数の権利者の合意(人間らしい特有の課題を確率にして示す)というリスクがあります。
契約計画は事業施行者の事業上の得失を定めてしまう極めて重要な側面を持っていますが、施行者が自主的に自力で、長期にわたる事業期間中の契約計画の立案が困難なことが問題です。契約デザインについて施行者に代わって事業コンサルタントが代行提案し立案支援することに、その趣旨からいって多少の問題を持っていることです。今後、専任の契約計画に関する担当者をおき、以下のような業務について充分な検討を実施して執行することが望ましいと思います。
①事業化行程と契約デザインのスコープ計画(概観デザイン)
②事業推進体制と組織的分担システムの策定
③契約計画に関する時系列的計画諸元の正しい把握
④契約デザインの基本的意図と基本コンセプト策定
⑤推進工程別の契約計画、業務と責任の分担計画等
⑥プロジェクト・マネージメントに関わる必要諸元
