再開発などにおける 契約計画の諸問題
[21世紀の実務と調和の時代に向けて]
21世紀は実務と調和の時代ともいわれています。一方では、「事業リスクの大半を事業協力者や保留床取得者が背負っていた時代が終焉し、投資収益率の重視に偏向が始まり、受託リスクに対する責任が厳しく問われる時代へ」と移行しているといえます。
再開発事業等の集団化事業は、集団化事業であるが故にいわばベンチャービジネスと言えます。このために、このグローバリゼーションと言われる時代の趨勢を背景とした経済秩序の中で、再開発事業等におけるリスク分担に対する論理的基盤の未成熟と社会的認知の不足もあり、われわれのような業界を含めて民間企業の積極的な事業参画を大変厳しいものとしている現状があります。さらには、眼前で展開する再開発与件が常といってよいほど変化しやすい状況であり、事業の推進主体である地権者組織にとっても、事業化目途の成立(事業の成立性確保)前段階までは極めて厳しい状況下にあります。
この対処方法として、参画する民間企業に対する公平なリスク分担等、様々な事業の関連業務に関する役割分担や責任範囲、利益配分などに対して一定の秩序を与える工夫、事業リスクを論理的・計画的に適正に分配するための視点と手法を構築する必要があります。そしてその代表的な要素が「業務契約の計画」であり「客観公平でかつ適正なリスク制御のもとに効果的な契約計画」を構築するものと位置付けています。
市街地再開発事業など公益的な集団事業は長期にわたる事業であり、その間に様々な利害関係者(事業参画者)が参画する場合が多いこと、長期間であるが故の計画与件の変化、投資に対する回収期間の長期化・不安定さ、事業システムの選定による異なる意思決定者と執行者など輻輳する数多くの要因があるのが常であります。この様な背景の中では特に有能かつ適切な制御者が必要となります。「業務契約の計画」化という行為が必要とする時代背景を、別の表現で言い換えれば、「複雑な参画者の利害関係に関する施行者執行能力とコーディネーター能力が大きく問われる時期に」と移行しているといえます。
単なる経済的与件の激動が原因となっているばかりではなく、公的事業の中にも総論ではなく課題を詳細にまで落として、構成する要因、相互関係やその仕組みを解明して、利害関係者の理解を進めるという深化が必要な時代を迎えているという感じがいたします。
[市街地再開発事業は百本以上の契約行為]
市街地再開発事業はスタート段階から竣工・清算まで10年有余の時間経過がこれまでの一般的状況であり、その間に様々な専門的技術者、専門家やデベロッパー、核店舗、事務局運営など事業参画者に対し百本を超える単位の非常に多くの契約行為が発生することが常です。ちなみに当社がお手伝いしました施行地区面積2.9Ha(一般及び特殊な公共施設整備を含む)のA地区市街地再開発事業(組合施行)の事例では特殊な事業整備内容及び細分化した委託発注も数多くあり1981年から1994年の13年間で計459本の契約が発生し、また別のPJで整備内容が比較的単純な施行地区0.9Ha(駅前広場等公共施設整備を含む)のB地区組合施行の事例でも再開発事業の都市計画決定以降から竣工・清算までの9年間に計115本の契約が発生しています。
[客観公平でかつ適正なリスク制御のもと効果的な契約計画]
[市街地再開発事業は百本以上の契約行為]で述べていますように、長い事業期間の各所で発生する多数の部分契約からなる全事業契約行程像について施行者の立場に立ち、事業参画者の立場になって、客観公平でかつ適正なリスク制御のもと効果的な統合管理された契約計画を構築することによって円滑な施行に貢献することが是非とも必要であり、コーディネータの基本役割かつ重要な仕事は、事業の円滑な遂行を目的とする集団事業における契約デザインの構築ないし契約計画案の策定にあるのではないかと言い換えることが出来ます。これは公益的集団事業に対する公明性や説明力(アカウンタビリティ)を求める時代への適合としても大切なことと思います。
[契約計画策定の目的]
そこで、まず契約策定の目的が何かを整理することとします。契約計画の策定目的の定義を「Contracting for Engineering and Construction Projects」書より引用しますと『契約関係にある事業参画者の双方が費やす技術者の専門的技術・労働力・資材・時間・品質・資金など資源を活用し最大の効果(利益)をあげるべく、計画することにある。』となります。(「Contracting for Engineering and Construction Projects」 Second Edistion 著者P.D.V.Marsh 1984:抜粋部和訳は当所、酒井立人、矢ケ部慎一による)
また本書によると、契約の第一の法則として『作業を始める前に計画する』ことをあげ、『契約を成功させるためには、経営者(依頼責任者)が設定した目的に沿った、明解で現実的な計画とすることが必要であり、発注者が入札募集を行う前に、あるいは単一の契約者との交渉を始める前に、契約のための計画が存在しなければならない。また多数の部分契約からなる包括契約の場合も、包括契約全体に対する契約計画が必要である。』と述べています。
[契約計画は論理的に]
そして、契約計画の要点として『契約計画は論理的に進めなければならない。建設・土木プロジェクトに関する計画は以下のように行うことが勧められる』とも述べています。
到達されるべき目的の確認
時間的観点からの目的の表現
必要であり入手可能な資源の評価
入手可能な資源を考慮した上で、必要とされる時間までに目的を達成させる最も経済的な方法の確立
選択された方法による責任の範囲
この視点はついて、当然のことかもしれませんが、再開発事業などまちづくり活動の一環にある共同建設プロジェクトに関わる者にとっては、契約デザイン及び契約計画を検討する上で多いに参考にしなければならないと思います。
そこで、次に契約計画の目的を達成してゆく段階で起きる再開発等集団化事業の課題を取り上げ、その対処への契約計画上のチェック要件をとりあげてみます。
