再開発事業における事業の進捗度とその要因の設定

「1.はじめに」でも触れたように、再開発事業は様々な関係者が集まった中で、事業の成立に向け各種の検討・協議を重ね、各関係者の事業参加目的や目標への気持ちの揺れ動きを制御しながら知恵を出し、意向集約し、問題を解決していく事業です。また、市街地再開発事業における保留床処分は市場経済の中にあり、したがって計画与件のうち経済環境の変動に強い影響を受ける事業でもあります。ここでは、まず、「事業の進捗度」を図のx軸に置き、事業化の展開を引き起こす要因(これをカタストロフ理論では基質変数と呼びます)について考えてみたいと思います。

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カタストロフについて
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(1) 事業の進捗度(x)

 基質変数の強弱の度合いにより、事業進捗の状況が異なったり、時間的経過度が異なって進むものとします。特に事業の初動期から事業の骨格を決める事業認可(組合設立認可)までを念頭に設定してみたいと思います。

   1)再開発に関する勉強会が開催された
   2)準備組織・地元組織が設立された
   3)都市計画決定がされた
   4)事業認可(組合設立認可)がされた

(2)基質変数

 事業が進捗するための基質変数(正規要因・分離要因)であるところの、関係者(利害関係者)個々の内的要因、関係者相互間の協調・信頼関係等の事業コミュニティに関わる要因、や経済変動に起因する立地・事業計画の諸元となる要因等、複数の要因が重なったときに、事態解決への目標の鮮明化が行われるなど、大きな変動が発生すると思われます。
そこで基質変数として、事業の進捗に関して直接的・間接的な要因として考えられるものをピックアップすることとします。

 1)事業の関係者に関すること
(1)リーダーのもと施行者(組織)会議等の運営がしっかりしているかの度合い
(2)権利者に事業推進への動機ないし目的意識の度合い
(3)権利者の中で確信的異議を唱える者の構成比
(4)行政の事業進捗に対する積極的姿勢、安定性と負担すべき資金応力
(5)コーディネーターの指導力の度合い
(6)行政、事業参画者相互、地元組織との間のリスク分担に関する役割の認知度
(7)業務代行者、保留床処分先と地元側との利害協調に関する信頼の形成度
(8)過去の経緯へのこだわり度

 2)保留床処分計画に関すること
(1) 事業の段階に応じた出店条件及び与件変化への対応における施行者との合意の度合い
(2) 事業参画者(ステークホルダー,権利者を含む)間のリスク分担と集団の意思決定水準)

 3)計画の成立性に関すること
(1) 施設計画の用途、規模、配置等における関係者の合意の度合い
(2)期待する投資利回り等収益水準が確保できる計画かどうかの度合い
(3) 根拠ある支出金、収入金として計上されている資金計画になっているかどうかの度合い
(4) 権利者の将来生活設計を描くことができている権利変換計画になっているかの度合い
(5) ビル完成後の床の所有・使用・賃貸借関係が整理されている管理運営計画になっているかどうかの度合い
(6) 事業計画の成立許容範囲は計画与件変動に対しどの程度あるかの度合い
    (事業資金上で変動に対しどの程度許容・維持できるか否か)
(7) 立地変化の急激度の度合い
(8) 許容される事業施行期間幅における各関係者の合意度等

 上記以外にもまだあるかもしれませんが、こうした内容は実は市街地再開発事業な共同化事業の事業リスクとしての座標でもあります。
 いくつかの実際の地区状況をみてみますと、これらの幾つかが大きな変動や変容を遂げ始めざるを得ない状況がつくられ、或いは幾つかのある大きな条件が整った時に次の事業段階にステップアップしているように観察されます。反対に一定の諸条件が整わなかった場合には、次の段階に達することができず事業が停滞しているものと思われます。
 このような状況に影響を与える基質変数(正規要因・分離要因)は上記のような各種要因が複雑に影響しあい、時には事業進捗の直接的な原因となり、また間接的な原因ともなって、実際の事業は動いています。
事業化のある局面で、ある種の要件が整ったとき、それは事業にとって好ましくもあり好ましくもない要因ですが、上記基質変数と見られる要因の中から複数以上の内的要因が複合して動因となり、ある種のカタストロフが発生することになりますが、再開発事業のような集団的事業の中からこれに関する一般解を得ることが出来れば各方面に役に立つのではないかと期待したものです。

 踏み込んだ考察についてはまた別の機会にゆずるとして、今回はカタストロフ理論を参考にして、再開発事業における事業の進捗とその要因を列挙しながら、考えてみました。

 事業化の条件が整わないことから、事業の現状を捉え一歩進めようとするとき、この様な考え方で事業の進捗に影響を与えている2つ以上の要因:基質変数(正規要因・分離要因)を挙げてみて、それらを解決するための具体的方法を検討、そして実行し、その効果を評価するということに今後もトライしてみたいと思います。

 事業を進めるためには、要因一つ一つの影響範囲の大小を判断しながら、地区の特徴的状況に応じて、計画的に順次解決していく必要があると思われます。特に、事業化という視点に立てば、夢実現への力を持った現実的計画立案・経済条件の合意・権利者合意形成が重要となりましょう。この様に述べることは容易ですが、どのような段取りで、どのような状況を構築し、どのような意思決定を行うかについて考え、行動するかは、適切な情報収集力、判断力、計画力が必要となり、地域固有特性もありなかなか容易ではありません。昨今の価値観の変貌、経済状況から、絶えず勉強が必要であることだけは確かです。

 今後は集団という一元的なものではなく、集団にクロスして事業参画者という存在が必要な時代になってくると思われます。このような複雑な反応を示すそして両集団に意思疎通が十分ではない複合集団におけるカタストロフ現象の観察を通じて考察を進めたいと思います。

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