2) 離散系シミュレーションによる人と物の流れ
離散系シミュレーションとは、聞きなれない言葉ですが、簡単に言うと人や物あるいはコトの流れをシミュレーションするものです。「離散系」という言葉は、一つ一つの事象(出来事)が独立してとらえられ、その事象の連なりによって組み立てられているシステムのことを言います。例えば、道路交通を例に挙げると「車が発生する」、「交差点部に進入する」、「信号が赤であれば停止する」、「信号が青に変われば発進する」などと一つ一つを切り離された事象(イベントと言います)として捉えたときに「離散系」の事象といいます。
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反対に「連続系」という言葉があります。離散系に対し、これは連続的な変化を対象にします。時速40kmで走行している車が10分後にどの位置にいるか、連続的な変化を捉えて考えるのが「連続系」といえます。
まちづくりにおける離散系シミュレーションの適用としては、例えば空間の状態によって人や車の流れなどがどのように変化をし、どういう状態に変わるかという問題に対して解答を得たいときに活用できます。
特に確率的に発生する待ち行列の問題に対して適した方法といえます。先の例でいえば交差点部の設計を考えたとき、予想される交通量にてらして十分交通処理可能かどうか、時々刻々とかわる交通の流れ、渋滞長などを再現することによってチェックします。一般に交通容量の計算は定式化された数式で条件を与えれば計算できますが、交通の発生は確率的な問題ですので、最大どれくらいの渋滞長になるかという答えを出すのは困難です。
離散系シミュレーションは、実際の交差点部の交通流をコンピュータ上で再現するため、交差点の形状を変えたり、信号サイクルをかえたときの交通の流れ、渋滞の発生状況を時間の流れにそってシミュレーションすることが可能になります。
離散系シミュレーションを行おうとすると、専門のコンピュータ言語、例えばGPSSやFORTRANなどでプログラムを作る必要がありましたが、最近ではかなり手軽にシミュレーションできる専門ソフトが販売されるようになってきました。多くは製造業分野の生産システムや生産管理などのシミュレーションにおいて幅広く活用されていますが、まちづくりに関わる土木建築分野での応用事例も今後増えていくものと思われます。

ここでは、空間における人間行動を対象にしたモデルと、自動車交通を対象にしたモデルを紹介します。空間と人あるいは車の関係を説明する「空間モデル」を離散系シミュレーションで表現することによって、まちづくりの従前、従後の人や車の流れがどのように変わり、空間として望ましい使われかたになるのかエスキスするうえで、こうした手法は有効な手段となる可能性をもっています。
歩行空間、施設内の賑わいをみる(賑わい度シミュレーション)
集客施設と人の回遊、滞留空間の関係を適切にデザインし、最適な賑わい感を演出することはまちの活性化にとって重要な要素といえます。まちの集客力にはその後背地の規模や商業集積度から限界をもちますが、その範囲で最適な賑わい感を生み出すにはどのような商店街空間の規模、施設配置となるのかエスキスします。
交通処理能力を検証する(バスターミナルのシミュレーション)
まちづくりでは公共交通サービスの充実も利便性を図るうえで重要な計画課題となります。一方、一定の敷地範囲で必要なバスサービスを計画したとき、現在の計画で運行システム上、十分にバスの発着処理、乗降客の処理が可能かどうかチェックする必要が出てきます。
周辺の交通の流れと時間帯別のバスの運行本数、系統に従ってモデル化を行い、処理能力の限界値を探り、代替案との比較評価を行うなど交通処理計画のエスキスを行います。

以上、GISそして離散系シミュレーションを具体にとりあげ、新たなシミュレーション技術の展開について、いくつかの適用事例を紹介しました。いずれも汎用性をもったアプリケーションソフトとして、かつてでは考えられないほど安価に利用できるようになり、シミュレーションの活用が随分身近になってきました。
関連する情報技術の発達と普及によりシミュレーションの適用可能性は今後も高まっていくものと思われます。一方でこうした情報技術の発展による可能性を活かして実地に使えるツールにまで具体化していくためには実用的で目的に適った論理構成とモデル開発が不可欠になります。今後も折りにふれて取り組みの成果をご紹介していきたいと思います。
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