地域コミュニティの再生とまちづくりの発想

新しい視点の必要性とその創出に向けて

はじめに 
(都市成熟期における既成市街地の再生に向けて)

 戦後の高度成長期の全国的な都市化の進展は、増大集中する人口の受け皿づくりに追われ、都市行政は郊外の新市街地整備を中心として展開しました。現在においてはその流れが大きく変わろうとしています。人口の増加のピークを目前にして都市の拡張速度は低下し、一方で都市の内部では、大都市、地方都市を問わず、急速な都市化の歪みに起因した問題や、人口の空洞化によるポテンシャルの低下など、新たな問題が生じています。
 人口、産業が都市に集中し、都市が拡大する「都市化社会」から、都市化が落ち着いて産業、文化等の活動が都市を舞台に展開する成熟した「都市型社会」への移行に伴い、都市の中へと目を向け直して「都市の再構築」を推進すべき時期に来ています。

 このような都市の社会的、経済的政策の変革は、都市に住まう市民の個性化、知的活動の欲求、創造の発露、物的、精神的な豊かさへの希求とあいまって、中心市街地の活性化をはじめ既成市街地の再構築を求めたまちづくりの政策が重視されています。
これまで既成市街地のまちづくりはその継続的な展開性という視点でみた場合、必ずしもうまく進んではいません。住民等の利害が錯綜するが故にまちづくりのイメージの共有や、主体である住民の能力を十分発揮できる環境を整えることができず、まちづくりが結実しない結果となっているケースが多くあります。

 これらの原因としては、そもそもまちづくりの発意がいくらかでも住民側に存在したか、都市行政のまちつくりの解説は十分だったか、まちづくり実現に向けた地域の夢の共有プロセスはあったかという問題。また、住民の価値観に対して柔軟性のあるまちつくりの計画が示されたかという問題や、各種事業手法、制度適用の問題、立地構成力への実需等の時間的、経済的問題。そして、その存在の濃い薄いを問わず、地域コミュニティ再編の努力(集団化の努力)がなされたかということが挙げられます。

 住民参加型のまちづくりの事例として法定再開発事業をはじめとした事業があります。しかし、それらの多くは都市施設をはじめとした具体的な整備課題があって、立地形成力 がある地区で、開発効果が十分に見込める地区において実現しいるのが実態です。この開発効果(利益)が合意形成のモーメントとなって実現している側面があるわけですが、今後の既成市街地において、商業の活性化や住環境の整備が求められる地域ではこれらの条件を満たす地区は当然限られています。

 大都市や地方都市を問わず、既成市街地の住宅ゾーンは一定の集積のもと安定しているかにみえますが、永続性の高い住環境としての達成度はまだまだ低いと言って良いのではないでしょうか。これらの市街地の有効な住環境形成については、開発効果を期待したまちづくりというのではなく、コミュニティの再編を介在させて取り組むべき話題といえます。

 個別に、隣人関係で、街区単位でというように、資産の保有を価値尺度とした発想から、利用価値に重きをおく発想へとシフトしていくことが求められます。私たちはこれまで都市という一定の密度を余儀なくされる環境に住まうことについて、積極的な姿勢で臨んでいた、都市での住まい方についての有効な作法を身につけるに至ったかという論点があると思います。街区単位での集合の形態や集団化による共同活用など、地域コミュニティの連帯によるより豊かで暖かみのあるまちが志向されてしかるべきと考えます。
本稿では都市の中の居住環境を中心に、今後の成熟過程において取り組むべきまちづくりの発想について、コミュニテイの再編を視点に述べてみたいと思います。

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