生活者における5つの波(5WAVES)と まちづくり
序.プロシューマーとしての生活者
「モノが売れない。」今の日本経済の現状を端的に表すとこの一言に尽きるのではないでしょうか。なぜ売れないのか。それは、「欲しいもの」がない、つまり需要がないからだと考えられます。では、「欲しいもの」とは一体何なのでしょうか。
かつてアメリカの心理学者マズローは「欲求の階層論」を唱えました。人間の基本的な欲求は並列的ではなく階層的に存在し、下位の欲求が満たされれば、次の欲求が起こってくるという考え方です。具体的には1.「生命の欲求」2.「安全・安定の欲求」3.「社会的欲求」4.「自我的欲求」5.「自己実現の欲求」の5段階に分けられます(実際には、6段階目の「自己超越の欲求」をマズローは挙げ、それを最終目標としています)。
これを日本における戦後の商品需要の動きに結び付けるてみると、下記のように表現できます。
第1段階 商品があるだけでよい。
(戦後のモノ不足)
第2段階 他の人と同じ水準のモノを持てればよい
(人並意識・中流志向)
第3段階 他人とは違うモノ、高級なモノを持ちたい
(ブランドの誕生)
第4段階 自分ならではのモノが欲しい
(個性の極化状況)
第5段階 自分のためのモノによる自己表現
(消費者による生産)
現代は、この第4段階から第5段階にさしかかる時期であります。
今から約20年前、アメリカの未来学者A.トフラーは、その著書「第三の波」に、「プロシューマー(Prosumer)」という言葉を登場させました。これはproduceとconsumeを組み合わせた造語です。プロシューマーとは、生産活動が消費活動に組み入れられることによって、生産と消費が一体化した新しいタイプの生活者を指します。日曜大工や自己学習、自宅勤務などに関連する、いわゆるDIY(Do It Yourself)志向が興ってきたことは、まさにこのプロシューマーの出現によるものです。情報を消費するだけでなく、生産(発信)することができる商品、パソコンもまさにこのプロシューマーに受け入れられる商品と言えるでしょう。
欲しいものがない状態というのは、商品が生産から消費への一方通行で流れている、前述の「第3段階」のような状態が依然続いているからではないでしょうか。これからは、生産と消費の双方向性を重視した考え方が必要なのです。
では、都市を考える上で、この新しい生活者(プロシューマー)にふさわしいコンセプトとはどういうものなのでしょうか。タカハ都市科学研究所では、この新しい生活者の背景を5つの波(5WAVES)としてとらえ、施設計画等に活かしています。今回の特集では、この「5WAVES」のコンセプトについてご紹介したいと思います。
