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ファーマーズマーケットから見るこれからの都市のあり方

ファーマーズマーケットと呼ばれる「農産物の直売所」が全国で隆盛を極めている。本来は観光施設である「道の駅」内に併設されている店舗も含めるといまやその数は2000を超えると言われている。計画中の店も含めて、当面その出店は続くと思われるが、出店が爆発的に広まったのはここ数年の間に過ぎない。

ところで、このファーマーズマーケットのシステムをご存知だろうか?


通常、農家が収穫した農産物は、一度地域のJA(農協協同組合)に集められそこから市場を介して全国に配達されてゆく。市場から先は量販店の配送センターに運ばれ、スーパーマーケットの店頭で私たちと出会う。


つまり、私たちが手にする野菜や果物は何十kmと長い旅を経て並べられており、それだけの長い物流コストやその間でいくつかの業者の手に渡る事で発生する手数料が、最終の販売価格に上乗せされている。例えばトマトを例に挙げるならば店頭では100円で売られている品でも農家段階での出荷価格は30~40円と言ったところだろう。つまり60~70円はその間で"上乗せされた"コストなのだ。それに対してファーマーズマーケットとは、農家が直接、店に持ち込み、基本的に自らが値付けを行い、売れた場合の15%前後の金額をファーマーズマーケット側に手数料として支払う、という販売システムである。


食品スーパーに対する差別化として、店頭価格が安く設定されている上に農家の収入としては従来の市場出荷の2倍近くなる。地元の農家が地域にあるファーマーズマーケットに持ち込む事が多いので「地産地消」ブームにも合致して、大変な支持を得ている。一見すると消費者としても農家(生産者)としても双方メリットがあるしくみであり、無駄な物流を抑える事は環境負荷が少なく「地球に優しい」とも言える。今ファーマーズマーケットの登場は多くのマスコミから賛美されている。しかしながらどうだろう、このファーマーズマーケットが生まれる事でその一方では、2つの問題が噴出しつつある。


考えてみて欲しい。ファーマーズマーケットの数は急速に広がっているとはいえ、実際は、野菜を食べる人の数(つまり胃袋の数)が増えている訳でもなく、野菜を生産する農地(農家の数)が拡大している訳でもない。つまり中間の流通が変化しているだけなのだ。これまでは市場に集められていた野菜が単に地元のファーマーズマーケットに運び込まれているに過ぎない。だが、農家の手取り額はアップしている。これで農家の意欲が向上し、どんどん生産を拡大してくれれば良いのだが、ここに日本農業の持つ課題がある。平均年齢65歳以上という高齢者が多い日本の農家にとっては規模拡大をするだけの労働力の余裕はない。むしろ手取りが挙がったならば、その分、耕作面積を減らして、売れる分だけを栽培し、従来どおりの所得が維持できればと思うのだ。


その結果、ひとつ目の問題として、水面下において、じわじわと耕作放棄地が増えている事が挙げられる。ファーマーズマーケットが隆盛を極めれば極めるほどに生産されない農地が増えるという矛盾である。


もうひとつの問題が都市部と農村部の分断を生んでいる事である。確かに「地産地消」(地元で作ったものは地元で食べる)という発想は美しいが、そうなると何十万人という都市部の人口の胃袋を満たす農産物は果たして誰が作るというのだろうか?基本的に農地のない都会ではファーマーズマーケットは成立が難しい。地域で作られる農産物が地域で消費される事が進めば、都市部にとっては食糧そのものの入手が難しくなる。
再びトマトの例を挙げるならば、ファーマーズマーケットに出荷すれば60円は儲かるにも関わらず、いまさら30円しか儲からないが都会出荷むけのトマトを作ってくれと誰が高齢の農家に頼めるだろうか?


ここにきてようやく都会に住む者は、これまでの生活において安価な農産物を何不自由なく入手できていた事の裏には、地方の農村の負担があった事に気付く。従来、農村の資源は一旦中央に集められ適正に再分配される事で誰でも入手ができた、しかしながらその資源が地方のレベルで分配を始めたらどうなるのだろうか?少なくとも都会では、今までの価格でそれを入手するのは困難だろうし、高品位な品を手に入れるには、それなりの負担を強いられる事になる。


では、これら問題に対して、私たちは、どうなるのか?
農産物をきっかけとした、都市と地方の再編が始まると私は考えている。
分断された都市と農村の繋がりを埋めるかのように、都市部からの人口の流出と農村との融合が始まるのではないだろうか?
都市、一極集中の終焉は食糧流通から始まるように思えてならない。


筆者:船井総合研究所 楠元武久

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